【現場レポート】VBAに手を出す非エンジニア、そのコスパは本当に合うのか?
- 運営 モチスタ
- 7月13日
- 読了時間: 4分
VBA(Visual Basic for Applications、いわゆるマクロ)は、Microsoft ExcelやPowerPointなどのOffice製品を自動化するためのプログラミング言語だ。
特にExcelとの組み合わせで使われることが多く、「業務を自動化するための便利ツール」として知られている。
これまで手作業で行っていた「面倒で時間がかかる業務」を、コンピューターにやらせることが可能になる。
Excelを多用する仕事であれば、VBAによる時短・効率化の余地は非常に大きい。
だからこそ、「これが使えれば便利だろうな」「周囲から一目置かれそう」と考える人は多い。
しかし、便利さの裏には、決して小さくない学習負荷と、報われにくい評価の壁が存在する──それが今回のテーマだ。
ノンプログラマーがVBAを学習することについて、実際にVBAエンジニアに転職した方から挫折した方などのインタビューから、多角的な視点から検討したい。
■社内ポジション視点:頼られる存在にはなれる
今の職場で「VBAが使える人材」になることで、周囲から頼られる存在になることはできる。 手作業で行っていた煩雑な事務処理を、数クリックで済む自動化ツールに変えることができれば、「あの人はすごい」「助かった」と感謝される場面も多い。
大手Sler出身者が「今まで一番楽しかった仕事は、某メガバンクの基幹システム開発ではなく、完ぺきではないが小さなシステムをマクロつくって感謝されたこと」と語っていたのが印象的だ。
■社内昇進視点:業務改善屋は、昇進対象にならない
ただし、その「すごい」が昇進につながるかというと、話は別だ。 VBAを駆使しても、それは「便利な裏方」に過ぎず、会社組織におけるマネジメントや収益貢献には直結しにくい。 表計算を高速化しても、それで管理職や事業責任者になれるわけではない。
さらに、昇進を判断する側も、ノンプログラマーがマクロを習得することの難しさを理解していないことが多い。 「1〜2時間でできるもの」と誤認されているケースもある。
■時間コスト視点:とてつもなくかかる
VBAは「ちょっとやればできる」ように見えて、実際には構文の理解、デバッグの繰り返し、エラーとの格闘など、目的にたどり着くまでに膨大な時間がかかる。
平日1日1時間を数か月続けても、正直なところ実務で使いこなせるレベルには到達しない。新卒エンジニアが数か月の研修を受けてもまだ半人前なほど、プログラミングは奥深い。
インタビューに応じてくれたVBA熟練者たちは、全員が業務外の時間で数百時間以上の独学を積み重ねていた。週末に講習を受けた程度で使いこなせるものではない。
■金銭的コスト:案外高い
独学にも限界があるため、結局Udemyや書籍、スクールなどに課金する必要が出てくる。トータルで数万円〜数十万円の出費になることも珍しくない。
効率よく学ぶには、「自分が書いたコードを人に見てもらってフィードバックをもらう」ことが最短ルートだという。そのためには、ココナラなどで最低10回程度、個別セッションを受けるのが現実的だ。
中途半端な知識はプログラミングでは命取りになりかねない。大型連休の時間をすべてバグ検知に費やした挙げ句、結局わからずプロに泣きつく──そんなケースも何度も見てきた。
■楽しさ:間違いなくある
一方で、「自動化できた!」という瞬間の喜びや、業務が魔法のように片付く快感は、確かに存在する。ロジックを考えるのが好きな人にとって、VBAはパズルのような楽しさがある。
楽しめる人には向いている。だが、それを「キャリア投資」と混同するべきではない。
■市場価値視点:フラット
「持ち出せない」スキル VBAは基本的にMicrosoft Office製品の中でしか使えない。 そのため、転職市場においてVBAスキルが直接的に評価されることは少ない。特に若手の総合職では、VBAを必須とする求人はほとんど見られない。 VBA専門のエンジニアも市場価値は高くない。(市場ニーズはあるが、金は出ない) なぜなら、VBAは新しい利益を生み出すものではなく、既存業務の効率化にとどまるからだ。
ただし、市場価値的に見逃せないメリットもある。 1つは、非エンジニアでありながら、自ら企業の課題を設定し、VBAを習得した胆力や主体性。これは営業、事業開発、カスタマーサクセスなど文系職種でのアピール材料になる。
もう1つは、起業や副業など、小規模事業を自分で回す際の希少な実務スキルになる点だ。事業を一人で運営するには、商品開発から営業、経理などのバックオフィス業務まで自分でこなす必要がある。その際、業務効率化の課題を自分で設定し、VBAで実装できる力は大きな武器になる。
どの視点を重視するか、そしてVBAを学ぶか否かは、読者次第だ。 ただ一つ確かなのは、学ぶのであれば、業務時間内外を問わず、最低でも1年間は本気で取り組む覚悟が必要だということだ。
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